炎天下のもとサトウキビをイメージしたポールがゆっくりとそよ風になびく。
64年前も、暑い夏だっただろう。
そしてさわやかな海風が流れていたに違いない。
式典の最中に、オカヤドカリがどかからとも出てきて、私たちの前をゆっくりと歩いて芝生の中への消えていった。
ここにも、自然のゆったりとした風景があった。
この風景が地獄と化したのである。
逃げ惑う人々に、このような風景は目に映ったのだろうか。
鉄の暴風といわれた激しい爆撃、艦砲射撃のなかで、叫びと血のにおいと、るいるいと横たわる亡骸しか映らなかっただろう。
目の前を歩きまわるオカヤドカリを見ていると、本当にここで戦争があったのだろうかと思ってしまう。
このオカヤドカリはなくなった住民の魂の生まれ変わりなのかと錯覚してしまうほど、ゆっくりと式典会場を歩きまわっている。
そこには、沖縄のゆったりとした時間と空間があった。
ゆったりとした、この島で、64年前に地獄は起こったのである。確かにこの地が戦場になり多くの命が奪われたのである。
さわやかな海風がほほをよぎり、サトウキビがなびくなか、「戦争を繰り返してはいけませんよ」、「平和な島にしてください」と静かに語りかけているような気がして、オカヤドカリが消えていくまで見つめていた。
沖縄全戦没者追悼式に現われたオカヤドカリ、6月23日、摩文仁
0 件のコメント:
コメントを投稿